酒蔵訪問~伴野酒造編~2021.08.24

こんにちは!

大変ご無沙汰しております。店主見習いのアキヒコです。
前回から早2年。だいぶ間は空きましたが酒蔵訪問を再開します。
2年前に比べ、大きく世の中は変わりました。何かと苦慮することが多いですが、なんとか食らいついています。

さて、前置きはこのくらいにして。
2021年7月12日、フランスのパリ市内で開催された「Kura Master 2021」において「澤の花 純米吟醸 夕涼み」(当店では完売)が美山錦部門において最高賞であるプラチナ賞、美山錦部門Top2に輝きました。

※Kura Masterとは
2017年より開催されている、フランスで行うフランス人のための日本酒コンクール。
審査員はフランス人を中心としたヨーロッパの方々。フランス国家が最高職人の資格を証明するMOFの保有者をはじめ、フランスの一流ホテルのトップソムリエやバーマン、カービストまたレストラン、ホテル、料理学校関係者など飲食業界のプロフェッショナルで構成。
フランスの歴史的食文化でもある「食と飲み物の相性」に重点を置いています。審査方法はブラインドでのテイスティング。ワインの評価と同じ100点満点の加点方式でおこないます。
(Kura Master HPより抜粋)

今回はその「澤の花」、「Beau Michelle(ボーミッシェル)」醸造元、佐久市の伴野(ともの)酒造株式会社について。直接お話を伺ってきました。

伴野酒造は1901年(明治34年)創業。
当店では上記の澤の花、ボーミッシェルの2銘柄を扱います。
信州、佐久の地酒でありたいとの想いがあり、仕込み水は八ヶ岳水系の伏流水、酒米は全て信州産のひとごこち、美山錦のみ。
今どきの華やかなお酒ではなく、ナチュラルで飲み続けられる食中酒が主なスタイルです。

お話を伺ったのは、杜氏で次期社長の伴野貴之(たかゆき)専務取締役。
(以下、伴野さんと呼称)

わたしの第一印象は、長身でイケメン!!(お世辞抜きです)声が大きく、お酒に対してストイック。伴野さん曰く、自分は人見知りとのことですが接しやすくて会話が楽しいなという印象です。

「自然体でなんか、ナチュラルなものがすきなんですよねえ。」と話します。
はじめて知りましたが、佐久の土屋酒造店、土屋社長とは高校から大学まで同じ学校で大学は同じ寮。伴野さんは「腐れ縁です。」とニヤニヤ。
大学卒業後、一般企業に就職。その後帰郷し、伴野酒造に入社。入社から3年後、前杜氏の引退をきっかけに杜氏に就任。当時の日本酒業界には危機感を感じていました。

伴野酒造だけのお酒

就任当時と現在とでは大きな心境の変化があったようで、当時はイメージするお酒はあったが、はっきりとイメージできていたわけではない気がすると。
というのも、米、酵母、造りなどスペックに気をとられており、スペックから考え、どんな酒を造るかに頭を使っていたためかなあと回想していました。
今は何を造るかより「どうありたいか」、「お酒で何を伝えたいか」にフォーカスを当てています。その考えをもった頃に、酒米を全て信州産に切り替えました。
何かのコピペではなく伴野酒造しか醸せない、オンリーワンのお酒を、記録よりも記憶に残るお酒を今も追い続けていますと熱心に話していました。

ストロングポイント

伴野酒造の強みは対極的な銘柄があること
「ボーミッシェル」は0杯から1杯のお酒として最適。もっとカジュアルに日本酒を多くの人々に楽しんでほしいという位置づけ。

「澤の花」はお酒の王道を追い求め、食と共にあるお酒をという位置づけ。一番のターゲットは日本酒マニアではなく、もっと違うところをターゲットにイメージしています。

ある夜

当店店主の印象に残っていることは?と尋ねるとたくさんあります(笑)と。店主のことは前々からいろいろ聞いていて、この人「人間として大きいな」と強く感じていたそう。
その中で一番だと言っていたのが8年前、当店の佐久平店出店時のエピソードでした。
開店準備期間だったとある夜、伴野さんが21時過ぎに店の前を通ると店主の車が一台。ああと思いちょっと寄って「手伝います。」と言ったところ、店主から「いや、大丈夫!」とちょっと立腹気味に返事が。
伴野さんも前職で飲食店新店の立ち上げを一人でやらなければいけないことがあり、本当に大変だったと遠くを見て話していました。
「だから、気持ちは良くわかり、頑なに一人でやっている後ろ姿にグッときました。でも頼ればいいのに。頑固だなあと思いながら、栄養ドリンクを置いて帰ったことですかねえ。」と笑っていました。

深化

この時期だからこそ何かやっていることは?という質問に対しては
この時期だからこそ何かやるというか、逆に立ち止まっていろいろ思案していると話す伴野さん。
酒蔵としての進みたいところはイメージできているので、誰に伴野酒造のお酒を伝えたいかイメージをより深いものにするためと。
あとは蔵内のレイアウトをより良くするため、蔵人みんなで変えていますとおっしゃっていました。

プラチナ賞受賞について

蔵マスターの美山錦部門プラチナ賞受賞については自分で言うのもなんですが、凛としたお酒だったから受賞させていただく事ができたのでは?とおっしゃっていました。
「伴野酒造では15年くらい全国新酒鑑評会に出品はしていません。求められるお酒が私たちの造りたいお酒ではないからです。ですが、市販酒のコンペのなかで何か一つ出品してみようということで探しているなか、日本酒の視点ではなく、ワインの視点で評価をいただく蔵マスターが面白いのではということで出品しました。信州産の美山錦、自分たちのスタイルで受賞できたことは大変うれしいです。」と喜んでいました。

日本酒の未来

また、伴野酒造に尽力いただき導入にいたった「ケグ」に関してもお話をいただきました。
「生酒は良い意味でも悪い意味でも、味わいの変化が速い。流通・冷蔵技術が発達した現代であっても、蔵でのしぼりたての感動は蔵でしか味わえないです。しかし、ケグ容器に詰められたお酒は限りなく蔵でのしぼりたてに近い味わい。近い将来、生ビールのように飲食店で生酒サーバーのようにみんなが楽しめるようになる日を心から願います。」と。

地酒とは

伴野さんには「地酒」に対し、並々ならぬ情熱があります。
「地酒はその昔、地元でのみ消費されたり、その土地でしか飲めないその土地で愛されている存在だったと思います。」
「当初は地酒っていうのが自分の中で固まってなく、酒メッセでお客さんに地酒ですか?と聞かれても日本酒ですと答えていました。」と話す伴野さん。
現在は地元に愛されるお酒でありたいと想うとともに、故郷をはなれた人が「故郷を思う郷愁のお酒」でありたいと強く願うとおっしゃっていました。
お客様に対しては、「好きな人・大切な人・気の合う仲間と飲む酒、そこに美味しい料理と楽しい空間があって。そんな日常にある日本酒をこれからも醸したいと思う。末長いお付き合いをよろしくお願いいたします。」と話していました。

故郷を感じる

わたしは伴野さんとお話するなかで「地酒って何?」を考えされられました。私は当初、地酒は地方の珍しい・稀少な酒?というイメージでした。最近では認識が変化し、蔵・蔵元の思いやこだわりが表れている、地に根差したものというイメージです。お話をお聞きして伴野さんが醸すお酒がより高いレベルでの地酒だと感じました。
関係のない話ですが、私の地元福島ではよくラーメンを食べます。私も地元のラーメンが一番好きで、帰ると家族で店舗に行って食べることが多く、私の中でごちそう。たまーに持ち帰り用の生ラーメンを買い、実家で作って食べる具のないラーメン。店舗までとはいかないですがやっぱりおいしいです。
ただ、同じラーメンを買ってこっちで食べると、もちろん美味しいのですがなんか違うなあと思ったことがありました。説明はうまくできないのですが。伴野さんの話の中で「故郷を思う郷愁の酒」という部分がありましたが、ラーメンが違うと感じた理由は「水が違うから」だと理解できました。
お酒は80%以上が水。有名な名水地以外、その土地の水を手に入れられる術はあまりないように考えます。その点、地酒というものはその土地の水を使います。ですから、地酒は慣れ親しんだ水を使うことで故郷を思い出させるのだと思います。伴野酒造でも地元の伏流水、酒米は信州産のみと信州・佐久を思い起こせる要素が満載です。だから飲んだ方に佐久を思い出させるのだと。

伴野酒造の澤の花、ボーミッシェルを扱える幸せを噛みしめるとともに、お酒のことはもちろん伴野さんの熱意を伝えていかねばならないと考えた訪問でした。

伴野さん・アキヒコのおすすめ

◆澤の花 ひまり 純米吟醸

ヒマワリのような爽やかさ、陽だまりのような暖かさをイメージした、品の良い香味。
蔵元:伴野酒造(長野・佐久市)
酒米:ひとごこち 精米歩合:60% 酵母:小川
価格:720ml 1,300円+税、1800ml 2,400円+税

久々の登場、澤乃花 ケグドラフトが8/27(金)より発売!
詳しくはこちら
8/27(金)販売!佐久平店限定「澤乃花 ケグドラフト」

その他の記事はこちらから

明鏡止水
亀の海
佐久乃花
和和和
浅間嶽
黒澤

※写真引用元:伴野酒造HP