第4回酒蔵勉強会2019.08.23

第4回酒蔵勉強会
こんにちは、アキヒコです。
お盆も終わり、若干バテている今日この頃です。
第4回酒蔵勉強会は、小諸市唯一の酒蔵である大塚酒造さんです。JR・しなの鉄道小諸駅から徒歩5分と近く、外観は今の時代では珍しい、皆様がイメージされるような土蔵の蔵です。
歴史が古く、1841年(天保12年、天保の改革の頃)創業。明治時代には代表銘柄である「浅間嶽」(あさまだけ)のにごり酒が、詩人・小説家である島崎藤村(しまざき とうそん)が綴った「千曲川旅情の歌」にうたわれているほどです。

今回の先生である大塚 白実(きよみ)さんのお母様である大塚孝子社長で7代目となります。当店で大塚酒造のお酒を扱うことになったきっかけは、数年前の長野の酒メッセでした。白実さん自身、当店の店主とは以前から面識があったそうです。その酒メッセで杜氏としての思いをぶつけたところ、当店の店主が白実さんの考えと浅間嶽の味を気に入り、取り扱いをさせていただくこととなりました。

自分で選択したこと

今回の先生、白実さんは全国的にも数少ない女性杜氏(女性の最高製造責任者。長野県の女性杜氏数は全国一。)です。きちんとお話をさせていただくのは今回が初めてでしたが、話すスピードを抑えてくださったり、質問の時間を多くとっていただくなど、丁寧にわかりやすくしようという姿勢が印象に残っています。白実さんは学生時代、県外の大学へ進学し動物行動学を専攻します。熱心にニホンザルの研究を行い、月一回山ごもりをするほど。「ニホンザルの研究が、お酒造りに役立っていることはありますか。」と私が質問をしたところ、「山ごもりのおかげで、お酒造りに必要な体力がついたことですかね。」と笑いながら答えて下さいました。大学卒業後、幼児教育を学ぼうと県内の短大へ進学。在学中、白実さんのお兄さまが蔵の後を継がないという決断をされるという出来事がありました。また、その時杜氏を務められていた方がご高齢だったこともあり「私、酒造りをやってみようかな」と思ったのだそう。そして短大を卒業後、白実さんは大塚酒造へ入社します。お酒造りに関する様々な講義を受講。猛勉強の末、2015年に晴れて大塚酒造の杜氏に就任。現在に至ります。いろいろな方から「自分を犠牲にして杜氏になってすごいね。」と言われるのだそう。正直、私も仕方なしに杜氏になられたのかなと思っていました。しかし、白実さんは自分を犠牲にしたとは思っていません。「高校や大学も自分で選択してきました。だから杜氏になったのも、私が決めたことなんです。」自分を犠牲にしたのではなく、自分で選んだ道なんだと思ってほしいとおっしゃっていました。

硬水で個性的な味に

大塚酒造ではお酒を仕込む際、主に小諸の水道水を使用しています。小諸の水は活火山である浅間山周辺の火山灰や軽石が堆積した地層を通り抜けてくるのです。時間をかけて地層を通り抜けてろ過されます。その過程でカルシウムやマグネシウム等のミネラル分が蓄えられるため日本でも少数の「硬水」になります。硬度でいうと約140mg/lです。小諸市の隣で、佐久平店がある佐久市の水道水の硬度はどのくらいかというと、20~60mg/l程度。軟水に該当します。比較すると、小諸の水道水の硬度の高さがわかります!では、硬水でお酒を造るとどんなお酒になるのでしょう。実はミネラルというもの自体、酵母の栄養分のひとつなのです。先述通り、ミネラルという酵母にとっての「ごはん」が硬水には多く含まれており、硬水をお酒造りに使用するとそれだけ酵母の働きを活発にするという効果があります。酵母の動きが活発になるため、大塚酒造のお酒はキリっとしたうまみのある個性的な味に仕上がるのです。

一歩ずつ

大塚酒造はお酒の石数(製造量)が100石(1石=1升瓶100本分)と、とても小さな規模の酒蔵です。大きな酒蔵とは違い設備が充実しているわけではありません。例を挙げると仕込み水(酒造用水)と酒母(麹・仕込み水・蒸米を混ぜた状態のものに酵母を加えタンクで培養させたもの。)、もろみ(酒母・麹・仕込み水・蒸米をタンクに投入し、発酵させたもの。日本酒を絞る前段階。)の工程で温度調整の設備があまり充実しておらず、保温マットや扇風機、氷で温度調整をしています。(仕込み水・酒母・もろみの温度は、日本酒造りに欠かせない麹菌や酵母の生育・活動に多大な影響を及ぼす。そのため上記を適切な温度に保つ必要がある。)昔であれば今の設備でも問題なくお酒造りが出来ていました。しかし近年では、温暖化の影響か気温が上昇傾向にあります。温度調整を今よりもきちんとできなければ、いいお酒が出来ないと白実さんは考えました。そこで今季の造りから、仕込み水ともろみ用のチラー(もろみ温度調節用の冷水をつくり、仕込み水を冷却するための装置)を導入します。さらに麹箱(麹を作る工程で使用する木製の箱)の容量を15kgから8kgへ変更。7kgほど重量が減るため、麹箱を移動させる際の体への負担が軽減されます。一番の麹箱の変更理由は容量を少なくすることにより、米麹の目標温度への細かな調整が可能となることです。反面、米麹の温度変化が敏感になり、こまめに見なければいけない手間も増えます。ですが白実さんは「もっといいお酒を造るため」という思いから、できる限りチャレンジをしたいとおっしゃっていました。
さらに今後の目標として
①小諸産酒米を使用したお酒の増産
②小諸の硬水をもっと生かした酒造り
③設備投資(移動こしき、蒸米の放冷機の導入など)
上記をゆっくり、一歩ずつ進めていきたいと説明して下さいました。

食卓に浅間嶽があれば

白実さんには目指すものがあります。「日々の食事に寄り添う酒」を造るということです。その為に料理の味を邪魔しない、ゆっくり味わえるお酒を追求し続けています。白実さん自身、これだ!というお酒はまだできていないそうですが、年々目指すお酒に近づいている感触はあるそうです。普段の食事や肩に力を入れず飲むための日本酒に浅間嶽を選んでもらえたら本当に幸せだと笑顔で話されていました。

私は今回の勉強会で、白実さんが大塚酒造の酒造りについてすごく楽しそうに話されていたことが記憶に残っています。白実さんが日本酒造りを心からお好きなんだと感じました。お好きだから杜氏になるということも白実さんが自分で選ばれたのだなと理解することが出来ました。小さな酒蔵ゆえ、ご苦労や制約も多々あるそうです。ですが、その中でも大塚酒造のお酒を飲んでくださる方々のために「どうしたら目指すお酒ができるか、近づけるか。」その為に何を行うのが効果的かということを考え、実行しておられました。今期のチラーの導入と麹箱の容量変更がそうです。真剣だけど深刻にならないよう楽しくお酒造りをされている白実さんの姿勢が、今の浅間嶽というお酒を形成しているなと感じ取ることが出来ました。これから白実さんや大塚酒造、浅間嶽がどのように変化していくのかが、楽しみでたまらなくなった今回の勉強会でした。これからも浅間嶽を皆様に知って、飲んでいただけるように努力して参ります。

アキヒコのおススメ一本

◆浅間嶽 純米吟醸

日々の食事に寄り添い、ゆっくり飲み続けられるお酒を目指す大塚酒造の逸品!旨みとキレがあり、やや辛口ながらもふんわりやわらかな優しい口当たり。ぬる燗もおすすめです。
蔵元:大塚酒造店(小諸市)
酒米:ひとごこち 精米歩合:59% 酵母:1401
価格:720ml 1,450円+税、1800ml 2,850円+税(2019/8/23現在、在庫なし)

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