第2回酒蔵勉強会2019.06.28

こんにちは。アキヒコです。
ジメジメした日が続きますね。こんな天候の時には夏酒を飲んでサッパリしたいと思う今日この頃です。

第2回目の酒蔵勉強会の酒蔵さんは佐久市臼田にあります、代表銘柄「佐久乃花」で有名な「佐久の花酒造」さんです。最寄り駅である臼田駅からも社屋が見えます。

1892年(明治25年)創業。今回の先生であり現在の社長、高橋寿知(たかはし ひさとも)社長で5代目となります。私の高橋社長に対する第一印象は「笑顔が素敵なおじさん」。いつもお会いすると「どう、もう慣れた?」と私のことを気にかけて下さる、優しく人間味溢れる方です。当店の店主の1学年先輩で高校から大学まで一緒の学校です。

清水屋との出会い

今では「佐久乃花」といえば説明が要らないくらい、全国的に名を馳せる超有名銘柄ですが、ここに至るまではかなりの苦労と運命的なめぐり合わせがありました。
佐久の花酒造は戦時中、酒造りを中断していた時期がありました。その後12年間の中断期間を経て復活。再開後ブランクが長すぎた為、売る場所がない状態でした。
それから日本酒が売れない時代が到来。高橋社長から見ても「あと何年もつの?」という感じだったそう。
当時、高橋社長は跡を継ぐのに抵抗があった為、大学も工学部へ進学。お酒に興味を持たないようにしていました。大学卒業後、システムエンジニアとして31歳まで東京で勤務。
1995年帰郷。跡を継ぎましたがこれからどうしようかなという時、ご縁があり近くの酒販店さんに当店をご紹介して頂きました。当時は地元佐久の中でも「どこ?最近できた酒蔵さん?」と言われることもあるくらい知名度がありませんでした。
ただ、清水屋の店主は「ネームバリューより、お酒が美味しければいい」いう考えで取引をスタート。最初はなかなか売れませんでした。
高橋社長が目標としていたのが同じ佐久の大澤酒造さん(明鏡止水)でした。東京に進出してよくお酒が売れており兄貴分として慕っていました。「明鏡止水」にあやかり、カッコいい四文字熟語をお酒の名前にしようと、自由に立ち振る舞うという意味の「閑雲野鶴(かんうんやかく)」という名前を付けたこともあるくらいです。
ある時、西日が当たる事務所で清水屋の店主と企画会議をしていたとき、この雑誌の日本酒特集で紹介されるのが蔵元の憧れになっている食雑誌「dancyu」に載れるようになればいいねと半ば冗談で話していたんだそう。ただ、高橋社長はじめ、そこにいる皆がそんなのあるわけないよなあと思っていました。

突破口は大吟醸の造りにあり

その頃、お世話になっている東京の酒販店さんにもお酒を置いてもらっていましたが、「あんまり美味しくない」とはっきり言われてしまいました。
ただ、高橋社長はどうすれば美味しいお酒が出来るのかわかりませんでした。でも手を掛ける=大吟醸の造りだということはなんとく感じていました。
そんなある時、長野県のお酒の勉強会がありました。そこで馬場先生という方にめぐりあい、どうすれば美味しいお酒が出来るのかたくさん聞き、学びました。その結果、造りの一番の要が「洗米・浸漬(しんせき)」(酒米を洗い、水を吸わせること)の工程だと高橋社長は導き出しました。それからは洗米と浸漬の工程に特に力を入れ、大吟醸以外のお酒にも、大吟醸と変わらない造りにより「米・水・酵母・麹・人間」のいい力を引き出すということを開始。
4~5年後、2000年くらいからようやく東京で売れ始め、あるわけないと思っていたことが現実になります。あの「dancyu」に取り上げられたのです。その後、佐久乃花の人気は全国区となっていきます。

高橋社長はこう言います。「突拍子もない夢も叶うことがある。もがいたけれど楽しかった。」そう話している表情は笑顔に満ちていました。

味を乗せる

高橋社長には「味を乗せてくれるお店にしか売らない」という信念があります。お客様が佐久の花のお酒と接する機会の多くは、小売店でお買い上げ頂くか飲食店で提供されるという2パターンです。その小売店、飲食店によって「味が変わる」と高橋社長は言います。
お酒をよく理解し的確な説明が出来るお店では、お客様がお酒に対し、良い評価をしてくださることが多いとのこと。逆もまたあるようです。
小売店、飲食店においてお客様に良い評価をして頂けることが「味を乗せる」ということだと高橋社長は考えています。
酒の味=蔵元+小売店や飲食店。だからみんな佐久の花の蔵人なんだと熱く話していました。味を乗せるということがお店の力の見せ所です。
今回の勉強会で、高橋社長が「今の佐久の花があるのは清水屋さんのおかげ。清水屋さんと共に歩んできたと思っている。」とおっしゃっていて私は胸が熱くなりました。
また、味をのせるという概念を高橋社長からお聞きし、理解することができ、今後の業務に大いに生かせると思いました。自分次第で味を乗せることはもちろん、酒蔵さんの顔に泥を塗ることもありうるということも肝に銘じました。
これからもお客様に良い評価をしていただけるように励んでまいります。
今後も佐久の花酒造が醸すお酒にご期待ください。

アキヒコのおススメ1本

◆佐久乃花 specD 純吟無ろ過生原酒

高橋社長曰く、佐久乃花酒造の酒質は「甘み、旨みがあり香りが高い」
酒米も一部自家田で栽培されています。
そんな佐久の花らしさが表れているのが「佐久乃花 specD 純吟無ろ過生原酒」です。
フルーティでスイスイ呑める可憐なお酒。飲みやすく日本酒初心者にもおすすめです。華やかな果実香を産生する「長野D酵母」が名前の由来。

蔵元:佐久の花酒造(佐久市・臼田)
酒米:ひとごこち 精米歩合:59% 酵母:非公開
価格:720ml 1,500円+税、1800ml 2,600円+税

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