第5回酒蔵勉強会2019.09.26

第5回酒蔵勉強会
こんにちは、アキヒコです。
だいぶ秋を感じる今日この頃です。
第5回の酒蔵勉強会は佐久平店がある佐久市の隣、佐久穂町の黒澤酒造さん。「井筒長」「マルト」「黒澤」の銘柄が有名です。
1858年(安政5年)創業。昨年創業160周年を迎えられました。今回の先生である黒澤孝夫社長で6代目。杜氏(日本酒造りにおける最高製造責任者)には弟の洋平さんが就任しています。

創業当時は清酒製造の他に、一族で銀行・呉服店・薬・みそ・醤油など、幅広く事業を展開していました。そのうち銀行は、長野県を中心に展開している八十二銀行の前身のひとつともなっています。
当店が現在のような酒販店の形態になった70数年前。その頃から「井筒長」を取り扱っておりました。小海本店の建物の壁には「井筒長」という、大きく年季の入った看板が飾られてます。

近年では、当店が造り酒屋だった当時の酒名「山泉」(本年分は予約が終了しております。)を毎年4月に復刻させていますが、その仕込みをお願いしているのも黒澤酒造なのです!
当店が取り扱う黒澤酒造のラインナップとして、日本酒では県内一般流通品の「井筒長」シリーズ。生もと(きもと)の一般流通品「マルト」シリーズ。同じく生もとの専門店向け商品である「黒澤」シリーズがあります。その他に米・そば焼酎、リキュール類、甘酒の取り扱いがあり、先述の専門店向けである黒澤シリーズを立ち上げる際、当店の店主がアドバイスをさせて頂いたこともありました。

黒澤酒造のお酒を世界へ

酒造りでは大量の水を使います。「お酒の量×100倍」の量と言われるほど。黒澤酒造では醸造用用水に敷地内の井戸水を使用。その井戸水は千曲川の伏流水でとてもおいしいと評判。県内の蔵で唯一、ミネラルウォーターとして販売をしています。黒澤酒造の井戸は全部で4つありますが、現在はそのうちの2つが現役。2つの井戸水を貯水、ブレンドして酒造りに使用しています。
酒米は普通酒から大吟醸まで、全量長野県産を使用。その中で、できるだけ東信産にこだわっています。5割以上が契約栽培で、10数年前からは自社栽培にも取り組んでいます。また現役で稼働している精米機も保有しており、100%自社精米で酒米の原料処理にもこだわっています。また自社だけではなく、他の酒蔵の精米も請け負っています。
約25年前からは銘柄名「くろさわ」をアメリカ合衆国を皮切りに輸出を開始。現在では世界6か国に輸出を行い、海外での日本酒の普及に努めておられます。石数(製造数)は約1600石と佐久周辺では屈指の量です。

生もとに特化する

ここから、かなりマニアックな内容となりますので飛ばしていただいても構いません。
黒澤酒造では「食事に寄り添い、二杯目からゆっくり飲めるお酒」を目指されています。そのために黒澤酒造の酒造りで欠かせないものが「生もと」。先ほどから何度も出ているワードですが、生もとというものは日本酒造りにおける伝統的な技法の一つです。最近再び注目されており、皆様も一度は耳にしたことがあるかもしれません。黒澤酒造では約6割が生もと造りのお酒です。
酒造りで欠かせない酒母(麹・醸造用用水・蒸米を混ぜたものに酵母を加え、タンクで培養したもの)。「もと」とも呼ばれます。酒母には大きく分けて「生もと」と「速醸もと」(そくじょうもと)の2種類があります。
酒母づくりの工程で欠かせない「乳酸」(タンク内を酸性に保ち、酒造りに必要な酵母以外の微生物や雑菌を淘汰(とうた)するために必要な物質)。その「乳酸をどうやって生み出しているか」ということが「生もと」と「速醸もと」の大きな違いです。
速醸もとでは人工的に生成した乳酸を添加。そのため掛かる日数が生もとの約半分です。また、腐造(仕込み中の酒が菌などにより劣化すること)の心配が少なく、安全に醸造ができる方法です。現在の日本酒造りにおいては速醸もとが主流となっています。
一方、生もとの方はというと、速醸もととは違い、乳酸自体を自然界(蔵の中)の乳酸菌から生み出しているのです。伝統的で自然の力を利用した方法のため、生もと造りは非常に手間と時間、労力を使います。黒澤社長曰く、生もと造りは現代でもまだまだ分からないこと、難解なことが多いそうです。
自然の力、人間の知恵によって醸された黒澤酒造の生もと造りのお酒は、骨太で旨みたっぷり。そして奥行きがあり、飽きの来ない味に仕上がります。その味は「食事に寄り添い、二杯目からゆっくり飲めるお酒」のために到達した黒澤酒造の現在の回答なのです。
黒澤社長は「特に燗をつけたときの旨さにも自信があるから、ぜひ燗酒にチャレンジして頂きたい」ともおっしゃっていました。

生もとの可能性

生もと造りのお酒は骨太で旨みたっぷり。熟成させるとまた違った一面を見せます。
黒澤酒造では様々な熟成方法に取り組んでおり、もともと自社の銀行だったところを常温貯蔵庫としてお酒を寝かせています。黒澤酒造がある佐久穂町のスキー場では雪の中で熟成させる氷雪貯蔵など、様々な熟成方法を行い生もとの可能性を追及し続けています。

no sake no life


黒澤酒造では先述通り、食事と寄り添えるお酒、華やかでインパクトのあるお酒ではなく二杯目からゆっくりと飲むお酒を醸したいという想いがあります。その想いと共に、生もと造りの味わいの深さ、冷酒からお燗まで受け入れる懐の深さ、熟成の可能性を黒澤酒造のお酒を通じてお伝えしていきたいとおっしゃっていました。そして、さらに生もと造りに特化し、極め、生もとといえば黒澤酒造、黒澤酒造といえば生もとと呼ばれる日を兄弟二人三脚で目指しておられました。

私は世界的に見ても、冷酒から燗酒という幅広い温度帯、様々な飲み方がある日本酒というものは珍しい存在だと考えます。そして、黒澤社長がおっしゃっていた生もとの「燗をつけたときの旨さ」を体験してみたいと思いました。今度、黒澤酒造のお酒で燗酒にチャレンジしてみようと思います。
秋の味覚と合わせて楽しむことができる味わいの深さ、黒澤酒造のお酒の素晴らしさ、それを黒澤酒造の想いと共にお伝えしていきたいと決めた勉強会でありました。

アキヒコのおススメ

◆黒澤 生もと純米80

「80」は精米歩合80%が由来。「磨くだけが能じゃない!」あえて、精米歩合を高めで醸したお酒はびっくりするほど高品質。アツアツのお燗がおすすめです。
蔵元:黒澤酒造(長野・佐久穂町)
酒米:ひとごこち 精米歩合:80% 酵母:901号
価格:720ml 1,050円+税、1800ml 2,070円+税
※2019年10月1日からの価格

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