酒蔵・ワイナリー見学記~ジオヒルズワイナリー編~2023.07.31

こんにちは。アキヒコです。
今回は小諸市の「ジオヒルズワイナリー」へお邪魔してまいりました。
小諸、御牧ケ原に位置する2018年設立の「ジオヒルズワイナリー」。
ベトナム語のGió(風)と英語のHill(丘)が名前の由来です。
園主の富岡隼人さんは小諸の旅館「中棚荘」4姉弟の末っ子。日本語教師のボランティアで5年間ベトナムへ。富岡さんの奥様もベトナムの方です。前述のご縁があり、ベトナム語を用いたワイナリーやワインの名称に。富岡さんはワインを通じて日本とベトナムとの懸け橋になりたいという想いがあります。
ちなみにベトナムもフランス領だったという経緯からワインを製造していますが、一般大衆はワインではなくお肉を食べながら高アルコールのお酒を嗜むようです。

当日、駐車場の近くにヤギが2頭、下草を食べていました。私は富岡さんのペットだと思い尋ねると、富岡さんはペットでもあるし、仕事もしてくれていると。
草刈りを行わなくても、ヤギを木の杭に繋いでおけば杭を中心に円形に雑草が無くなります。人間では体力的に厳しい傾斜地の雑草もパクパク食べてくれる為、富岡さんも大変助かっています。また、ヤギのフンはブドウの樹のたい肥に、ブドウの樹の剪定した枝はストーブの薪に、そのストーブの灰はブドウ畑に撒くという形で一連の循環が出来ています。

ジオヒルズのスタートは富岡さんのお父様が小諸のマンズワイナリーの試験栽培を請け負ったことがきっかけ。お父様と当時のマンズの醸造責任者が同級生でした。
そのお父様も同じくベトナムのストリートチルドレンを支援する活動やベトナムの学生にそば打ち体験を通して日本の食文化を伝える取り組みでベトナムを縦断したことも。
本業である中棚荘では地産地消を。富岡さん曰く「自分で全部やる人」。
その後を引き継いだ富岡さん。当初はブドウ作りやワインの製造に従事するとは全く想像していなかったといいます。
ジオヒルズのブドウ畑は名前の通り丘のような台地でよく風が吹き抜けます。御牧ケ原は大昔、湖だったところが隆起。土壌は粘土質でブドウのタンニンがまろやかに。標高もあるので酸もしっかり。

富岡さんのワイン製造は自分の造りたいもの、ブドウのポテンシャルを出し切ることがテーマ。
最近、ジオヒルズワイナリーの「Mimakigahara 2021_M」が「フェミナリーズ世界ワインコンクール」において、2年連続の日本ワイン部門金賞を受賞する快挙を達成しました。
※フェミナリーズ世界ワインコンクール
本場フランスでTOP5に入る世界的知名度の高いコンクール。最大の特徴は、審査員が世界中の女性ワイン専門家であるということ。経験豊かな約600名の女性ワイン専門家が集まり、厳正なブラインド・テイスティング審査で評価しています。

一度目の金賞受賞の経緯ですが、賞を頂くために出品したというより自らのワインに対するコメントがいただきたくて出品をしたというもの。今までのものから180°製法を変え、香りに特化。
二度目の受賞ワインは一度目よりも骨格を残し、酸・香りも多少残して。富岡さんはブドウの異なる一面、ポテンシャルを引き出せたと笑顔。
富岡さんがおっしゃっていたことは「作ってみないとわからない。」小規模な製造量のためチャレンジできる絶対量が多くはありませんが、毎年、製法を変更し試行錯誤を行っています。
お客様に「あの年のワイン良かったよ」とお言葉を頂くことがあり、嬉しい反面少し困ってしまうこともあるとか。
ジオヒルズではシードルも製造。ワインはある程度、製造方法が固まっていますがシードルはまだまだクリエイティブ。海外では缶で気軽に楽しむようでそのような製品の製造も将来できたらいいですねと富岡さん。
富岡さんは地域との繋がりも大切にしています。シーズン中は毎月、小学生と高校生に畑に来てもらい作業を一緒に。ワインのエチケットも学生さんにデザインしてもらいます。高校生は商業科の生徒さん達。実際に自分たちが携わったワインを高校の文化祭で販売します。マーケティングの勉強にも。また、そのワインを取って置き、20歳の記念として楽しむ生徒さんもいます。
富岡さんは言います。「取り組みを通じて、まずはこういう産業もあるんだと知っていただければ。」
その先に目指すものはフランスのようにワインを文化としてこの地に根付かせること。
「ワインの品質は上げ続け、ワイナリーの敷居は下げ続けたい」と富岡さん。

ドメーヌ化については、まずは自分の手の届く範囲でやりたいという感じでした。富岡さんお一人では限界がある為、共生という意味でも契約農家さんのブドウも使って行けたらとおっしゃっていました。この地のワインが地元ですべて消費できれば一番良いといことも。現在の課題は収穫時期の人員確保。当店も何かお手伝いできればと考えています。
醸造場は特注の梁を用い、柱が一本もない造り。夏でも涼しく冬は寒すぎるくらいなんだとか。開放的な空間で内部は清掃が行き届いており、各機器には車輪が。自由にレイアウトの変更が出来ます。
印象に残っていることは内部の清潔感です。聞くと日ごろの清掃は欠かさないようで、特に8月の仕込みの前には機械を始めとしたあらゆる箇所を清掃するよう。
理由は言うまでもありませんが「白いキャンパスに絵を描くときれいだが、汚れたキャンパスに絵を描くとどうなるか・・・。」と富岡さん。酒質にも影響するようです。
畑は醸造所の周りと車で3分ほどのところに位置。合計約3ha。
畑に入った際、未舗装路の土がかなり粘性のあるものでした。粘土質土壌というものを実感。
ブドウの樹の支柱にはマンズレインカットといわれる雨除けの仕組みがありました。

富岡さんからは本気でワインを文化としてこの地に根付かせるという気概を感じました。そしてブドウ栽培やワイン製造は何代にも渡ってバトンを受け継いでいく産業ということも学びました。持続可能な産業として、また地域の一つの文化として受け継いでいく富岡さんとジオヒルズワイナリーの力に少しでもなれればと思います。これからは販売はもちろん、触れて知っていただけるよう、週末試飲でもワインを積極的に出していこうと考えています。