新規お取り扱い蔵「尾澤酒造場」十九2023.03.09

本当に長い道のりだった。

思い返せば20年ほど前、尾澤酒造場が長野の酒メッセに斗ビンを持ち込んで登場し、異彩を放っていたのを俺は目撃していたのよ。その時めっちゃ気になっていたものの、蔵訪問までこぎつけず酒販店登録シートを提出しただけで終わった。
そして当蔵が酒メッセに参加しなくなり、そのお酒を飲むことも叶わなくなっていく。

それがね10年ほど前、どんな風に進化しているのかふと思いたって、友人の酒販店から当蔵のお酒を何点か購入させてもらったんだ。そしたらね、まず定番酒のバランスの凄さと新しさにびっくり。そして生酒の瑞々しい美味しさは俺のド真ん中のタイプだった。あまりの感動にまたアポを取る。だが、美由紀杜氏は会ってくれない。
今お付き合いしている特約店さんに満足に商品が行き渡らない状況だから、ということだった。

俺は本気になるとすぐ実行に移すのが自慢。突進するくせに否定されると誰よりも落ち込み、尻込みし始めるダメなボクちゃんに変貌するのよ。美由紀杜氏とのやり取りの中で見事に自信を無くし動きが止まる。
それでも本気なことに変わりなく、またアタック。その繰り返しが幾度かあったわけ。

ご縁のない状況が続いたある日だった。
2019年10月、台風19号が県内に甚大な被害を及ぼす。当店で扱う「水尾」醸造元、田中屋酒造店も例外ではなかった。
想像を絶する被害状況を社長である田中隆太氏から聞く。すぐに娘婿の暁彦と共に復旧作業に向かうが、現場ではすでに美由紀杜氏が、尾澤酒造場3名の蔵人を始めとした関係者をまとめて陣頭指揮に立っていたんだ。
自身の酒蔵の造りも始まるというのに、田中屋さんのために蔵人と共に体を張っていた。
田中屋さんの一大事に、俺も含めそれぞれができることを探して一生懸命だったよ。でもさ、咄嗟に“人として”何ができるか、何をするのか⁈ そんなの見せられればそりゃ俺だって心が震えるよね。

災害がきっかけなのは不謹慎だと考え、年を越してからまた動いた。だが、美由紀杜氏とはやはり会えず。けれどもその際「年明けの5月にまた縁があれば・・。」という返事をいただいた。
そして、昨年の6月にやっと当蔵への訪問が叶う。
今季の造りの前、メールでのやり取りをおこなった。それでも取引は無理だろうなと思っていたところ先日電話があった。取引OKの電話だった。早速、社長と杜氏が小海本店にお越し頂き、とうとう「十九」の正式な特約店となった。

「あの隆太さんのとこのボランティアに一緒に行っていたうちの蔵人が、清水屋さんに自分たちのお酒扱ってもらいたいと言ってくれたのが大きかったんだよ。」
人として酒屋として最高の言葉をもらったよ!

私は新たに提出を求められた酒販店カードにこんな言葉を書きました。

「十九を精神的な柱商品として育てていきたい。十九というメッセージ性の強い芸術品を通じ、地酒の持つ力を皆様にお伝えしていきます。よろしくお願いいたします。」

★尾澤酒造場(長野市信州新町)
「十九」醸造元。
人間だと一人前といえば「二十歳」
当蔵は初心を忘れずいつまでも自分を律し、そして造りに対する終わりなき探求心を追い求めることを酒名に込めました。
味わいに醸した人の心があらわれるといいます。正直で繊細、キリッと真っ直ぐなメッセージ力のある酒。どうか当蔵の心根(こころね:魂)を味わってください。

◆十九 Le cerisier rose m’apporte 桜

美山錦50%精米 7号酵母 活性おりがらみ
Le cerisier rose m’apporte はフランス語で「桜の花が春の訪れを教えてくれる」という意。
先に来る優しい甘みを貫く豪快なシュワシュワ感とキレのギャップに痺れます。
よーく冷やして!※開栓注意
720ml 税込 2,079円
1800ml 税込 3,927円